イベント・レポート

橋本有津子ジャズ・オルガン・トリオ LIVE !

コンボ・オルガンクラシック・オルガン
日時
2011年6月25日(土) 19:00開演
会場
アートフォルム田町サロン(静岡県浜松市)
出演
橋本有津子(Org)
橋本裕(G)
星合厚(Ds)
使用楽器
アトリエ・コンボ AT-350C
クラシック・オルガン C-330
ギター・アンプ JC-120
Vドラム TD-20KX-S
主催
丸八不動産株式会社
協賛
ローランド株式会社

当会場初のジャズ・オルガン・ライブ

場所は浜松市内の「アートフォルム田町サロン」。ここは浜松駅前のマンションの1階にあるギャラリー&サロン。「観」「聴」「食」をテーマとした美術、音楽、会食などの催しを会員様向けに提供するスペースです。毎月1〜2回程度、プロのジャズ演奏家を招き、サロン会員や浜松ジャズ協会そして大学のジャズサークルの皆様方を中心としたジャズ愛好家が集まる場所となっています。

サロンでのジャズ・トリオ・ライブ

サロンでのジャズ・トリオ・ライブ

橋本有津子さんはジャズ・オルガン奏者として米国の有名ジャズ・フェスティバルに招待されたり、毎年米国ツアーをされるなど本格的ライブ活動をされているかたわら、日本でも関西のライブハウスを中心に活躍されています。今回はギタリストにご主人の橋本裕さん、ドラマーは旧友のエンジニアでもある星合厚さんです。

「アートフォルム田町サロン」でのジャズ・オルガン・ライブ開催は初めてとのこと。会場は100名を超えるお客様で満席となりました。司会進行は、当サロンのオーナーである平野修さん。ジャズを語れば浜松で右に出る人はいないと感じさせるほどのジャズ愛好家で、当企画を実現に向けてけん引された方です。また今回のライブは Ustream でネット配信され、世界中の人たちがパソコンや iPhone から生放送で演奏を楽しめるよう、ローランドと共同で企画されました。

軽快でグルーブ感のある演奏で「バッハ」も

橋本さんは今年2月に米国レーベルより「Until The Sun Comes Up」というリーダーCDの6枚目をリリースし、米国ラジオ局CDチャート No.1 を獲得しています。今回メンバー構成は異なりますが、このCDより数曲を選んで演奏されました。
オープニングの “All Or Nothing At All” は、軽快なオルガンとギターのアドリブ・ソロがテンポ感のあるドラムの上で自由に奏でられる気持ちの良い作品。続いて “Isn’t She Lovely” ではアトリエ・コンボ AT-350C の個性的なスーパーナチュラル・ハーモニカ音色でテーマを奏でる元気な演出です。また “Good Life” はゆったりとしたバラードで、オルガンの柔らかい音でのムーディーな伴奏と、メリハリのある音の流れるようなアドリブ・ソロでした。そのあと “Blues For Naka”, “Yours Is My Heart Alone” とテンポの良い曲が続いて前半のプログラムが終了しました。

演奏者と同じ目の高さで、すぐ近くまで客席が並んでいるため、前列の方は目の前で迫力ある演奏が楽しめますし、正面の壁に据付された大型テレビではライブ映像が映しだされ、奏者の指の動きがアップで見えます。
一方、会場のお客様とは別に、ネットワーク上のライブスペースとなったUstream の視聴者様からは、「オルガンの音がいいですね。」「グラスを傾けながら素敵なジャズを聴けて、幸せです。」といったありがたいチャットメッセージがリアルタイムで次々と届きました。

「トッカータとフーガ」を弾く橋本さん

「トッカータとフーガ」を弾く橋本さん

後半はこのライブの目玉である 「トッカータとフーガ ニ短調BWV565」 で始まりました。J.S.バッハのもっとも有名なパイプオルガン曲の一つです。クラシック・オルガン C-330 のソロによる荘厳なパイプの響きでトッカータが奏でられました。高い位置に取り付けられたサテライト・スピーカーからは残響音が降り注ぎ、まるで大聖堂にいるような心地よさでした。

フーガに移ると、原曲とは異なる転調があり、聴き手が「おやっ」と思ったところでギターとドラムが加わりジャズ・アレンジでの展開に変化します。ギターとオルガンが交互にアドリブを奏でますが、クラシック・オルガンの響きを崩さないようバロック調のフレーズでソロが構成されています。クラシック曲のジャズ・アレンジはよくありますが、橋本さんの演奏はクラシック・オルガンの音色や奏法を重視しつつジャズの自由度を加えたもので、原曲へのオマージュが感じられ、とても印象的でした。
そもそもバッハの時代の音楽は今のクラシック音楽に比べると即興演奏の要素が強かったといわれていますので、即興を主体とした現在のジャズとは考え方が近いのでしょう。

オルガンとギターのコンビネーションは絶妙。

オルガンとギターのコンビネーションは絶妙。

その後はカーペンターズの名曲 “Close to You” 、映画音楽として有名な “Moon River” が最新CDと同じアレンジで、さらに “What a Wonderful World” (邦題:「素晴らしき世界」)は東日本大震災の復興を願い演奏されました。いずれもよく知られたポピュラー曲をジャズ・アレンジで楽しめました。クロージングの “So In Love” はスローで演奏されることの多い曲です。しかし橋本さんはアップテンポでスリリングに演奏、オルガン・ソロでは次々とフレーズが溢れ出してきます。その即興フレーズの豊富なボキャブラリーはまさに圧巻でした。

後半全5曲が終わっても拍手が鳴り止まず、アンコール。曲を準備していなかった、ということですが、わずかな打合せをするとすぐにガーシュウィンの “Summertime” の演奏となりました。しっとりとしたミドルテンポのリズムの上でオルガン、ギター、ドラムが交互にソロを奏で、裕さんの関西弁でユーモアたっぷりのMCでしめくくり、曲が終了。会場はたいへん熱狂し、スタンディング・オベーションとなりました。

オルガン・ジャズとしての新しい表現

今回のライブでは、橋本有津子さんがアトリエ・コンボのトーンホイール・サウンドを使って、圧倒的なグルーブ感でオルガン演奏を繰り広げてくれました。それに加えてオーケストラ音色でのメロディーを織り交ぜたのも印象的でした。また、何と言ってもクラシック・オルガンによるバッハとそのジャズ・アレンジは、どこのジャズバンドにもない特長的な演奏となりました。

アートフォルム田町サロンに足を運ばれた常連の方々は、ソロ回しのアイコンタクトを注意深く観察したり、拍手や掛け声を入れたりと、惜しみない反応をしてくれました。そのため会場は和やかで一体となり、とても暖かい雰囲気で満ちていました。 そして何より、長年のパートナーであるご主人の裕さんとの絶妙なコンビネーション、緻密で迫力ある星合さんのドラムが息ぴったりの演奏で、心から拍手を送りたいライブでした。

当ライブの Ustream アーカイブ(外部サイトとなります)

後半の約1時間が楽しめます。

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