2005年2月8日、アリゾナの自宅で他界されたオルガン・ジャズの第一人者、ジミー・スミスさんを追悼して5月23日、六本木のスイートベイジルSTB139で『ジミー・スミス・メモリアルコンサート・ジャパン』が開催されました。このコンサートの発起人は、ジミー・スミス氏の愛弟子で、世界的に活躍されるオルガン・プレーヤーKANKAWAさん。コンサート当日の楽屋にお伺いして、当日のステージで使用されたVK-88VK-8について、ジミー・スミスさんとの思い出をお聞きしてきました。

本名 寒川敏彦。19才で渡米しジャズ・オルガンの神様ジミー・スミスに師事。 1977年、テレビ番組『11PM』(日本テレビ系列)のレギュラー・オルガン奏者としてデビュー。1991年 「最も輝いたアーティスト」としてニューヨーク市長より表彰される。世界的に活躍するオルガン・プレイヤーで、ジミー・スミス、ディヴィッド・サンボーン、デニス・チェンバース、バーナード・パーディー、オマー・ハキム、ダリル・ジョーンズ、レニー・ホワイト、アンソニー・ジャクソンなど、共演ミュージシャンは多数多岐に渡る。2002年からはサイケデリック・ジャムバンドKANKAWA122としても活動している。2005年7月、DJ KENSEI とのユニット "NUDE JAZZ"のライブ盤CD発表。
http://park14.wakwak.com/ ̄kankawa/

-- 最初に出会ったローランドの楽器を憶えていらっしゃいますか?

KANKAWAさん(以下):そりゃ大昔だよ。ローランドという会社ができたばかりの頃だから。何だっけ? あの大きなオルガン。

ローランド・スタッフ:VK-9ですね。会社ができて5〜6年の頃にできた楽器なので、もう30年近く前になりますね。

そういうオルガンを大昔に弾きました。それがローランドとの出会い。

 

-- その後、ローランドの楽器を使われてきましたか?

:これがねぇ、VK-9以降はお付き合いがなかったですね。でもN.Y.には、ローランドの商品がやたらと多いの。だからいろんなキーボードをレコーディングに使ったりはしていたけど、本格的にローランド製品を弾こうと思ったことはなかった。というのは、僕はオルガン弾きでキーボードに興味がなかったからね。キーボードに興味が出てきたのはここ数年なんです。清水興さんたちと一緒にKANKAWA122ってバンドを始めたり、DJ KENSEI君と一緒にnudeJAZZをやり始めてからだね。

 

-- ローランドのオルガンの音について、どのような印象をお持ちですか?

:楽器によって違うよ。VK-88は音の立ち上がりがいい。特に良いのがベースだね。僕が試した感じでは、ベースアンプのCUBE(CB-100:この日のステージではVK-8VK-88のステージモニターとして使用されていた)との相性は抜群に良かったね。僕は先ほども言ったようにオルガン弾きなんだけど、最近122とかDJとのセッションでの新しい音楽を通じて、新しい楽器が欲しいという気持ちが強くなってきた。そういう意味じゃVK-88のオーケストラやオルガンの音と、大好きでよく使っているDビーム、これは革命やね。Dビームはバンドでも凄い人気。ステージで手をかざしてると、お客さんが「KANKAWAさん何してんのやろ?」って不思議そうに見てるよ。

 

-- VK-88の魅力を具体的にお聞かせいただけますか。

VK-88は楽器のことをちゃんと分かって演奏せなアカンね。アンプリファイアーの組み合わせとか、まだまだ研究の余地がある。まだ誰もそんな研究してないでしょ? VK-88を一番弾いて欲しいのはジョン・メデスキーだな。あとは死んじゃったけどサン・ラ。サン・ラが弾いたら一番面白い楽器だと思うよ。「オルガンかどうかは関係ねえ、俺が好きな音だから使うんだ。楽器に合わすんじゃなくて、俺に楽器を合わさんかい!」っていう、それくらいの信念を持ってる奴に弾いて欲しい。本当のオルガンは、どんなロック・ギタリストにも負けへんねん。VK-88をセッティングしてくれたらそこらのどんなギタリストにも負けへん演奏してやりますよ。僕、まだVK-88本気で演奏してないからね。今度そういうチャンスがあったらお見せしましょう。

 

-- VK-88は、まだまだいろんな可能性がある楽器ということですね。

:まだまだ研究の余地があるからこそ、いろんな可能性があるの。あの楽器はそれだけ面白い。そこまでの楽器やから言うんやけど、やっぱりデザインも大事やで。ショッキングピンクとメタリックとか、もっとブッ飛んだ格好してくれてたらこっちもその気になるやんか。そういう世界に行ってくれたら、世界一の楽器になるよ。『トリビュート・ジミー・スミス』っていうアルバムを6月から作るんだけど、VK-88をいろんな形で使うよ。ジョー・ヘンダーソンのところにいたマーク・ホイットフィールドや、僕の友達のフィル・アップチャーチ、そして何とケニー・バレルさんがトリビュートするんだ。この前、清水興のV-Bassの音が凄くいいと思ったから、日本代表で清水ちゃんにはV-Bassでアコースティックな音を演ってもらいたいと思っている。

 

-- 今日のステージではVK-8もお使いになられますね。

:そうそう、VK-8もなかなか音がいいんだよ。リハーサルで弾いたら凄い音がよかった。あれは結構イケてる楽器やで。KANKAWA122のアルバムでも、7月に発売するnudeJAZZのアルバムでも、使ってるオルガンはVK-8VK-88だけやからね。DJ KENSEIと絡む時もVK-8でしかできないよ。122の音楽はオルガンで空気を裂くし、12音階を超えたところで成立してるんだ。VK-8のハーモニック・バーを動かしながらDビームを使う。例えばDビームのリングモジュレーターを使うと音階が崩れるから一瞬にして未来に行けるんだよ。12音階というマインド・コントロールからの脱出がnudeJAZZのテーマだから、そのためにもDビームが必要なんだよ。

 

-- 音楽上のさまざまな制約から解き放たれる楽器であるということでしょうか。

:解き放たれるよ。メジャーは明るくてマイナーは暗いと思ってるでしょ? とんでもない! メジャーが暗くてもいいじゃない。それができる楽器やねん。この前ナニワ・エキスプレスとデニス・チェンバースのコンサートがあって僕も演奏したんだけど、その時なんかDビームを足で操作したよ。足で弾く、これ解放されるよ。あと、よくお客さんにもVK-8を弾かせるよ。客席に持って降りて、目の前にどんと置いて「弾け!」って言うとみんな弾くんだよ。面白いね。弾ける子はクラシックなんかタラララって弾くし、僕の真似してアアアーって言いよる奴もおるし(笑)。オルガンでそんなふうにしてみんなと一緒になりたいなぁと思うわけ。

 

-- ジミー・スミスさんとのことで、一番印象に残っているエピソードをお聞かせください。

:それ難しいなぁ。ジミーさんは気が強いところと弱いところがある人間。今日ステージでも言おうと思ってたんだけど、ローラさんっていう奥さん、彼女はジミーさんの味方でね。その女性はライブの時なんか必ずステージの袖におって、それをあのジミー・スミスが演奏しながら1分に1回くらい彼女の顔を見よるねん。彼女が「ジミー、今日は調子良いわよ、ステキじゃない」って顔で頷いたら「そうか」って顔して演奏を続けるの。そういうところがあるんだよ。あれほどわがままで強気な人だけど……。口癖やからね「I'm Jimmy Smith」っていうのが。

清水興さん(以下:(KANKAWAさんと)一緒だ(笑)。

:僕はもっとジェントルマンだよ(笑)。ある日、ジョン・ヘンダーソン、ケニー・バレル、グラディ・テイト、ロン・カーターやらとライブに出ていた時、店のウェイターが目の前に居るのに「ジョン、煙草買ってこい、ケニー、水持ってこい」って、みんなの前できちっと彼らを走らすねんで。で、「そろそろ本番です」ってスタッフが来るやんか。そしたら今度は機嫌悪うなんねん。そこは僕と一緒(笑)。あと5分、5分前って言われると僕とかジミーのタイプはキレるね。スタッフは悪くない、分かってるけど条件反射でキレるのよ。でもちゃんとステージに出たら今度は演奏が楽しくなるのね。

:フィル・アップチャーチと一緒に飲んでたら、彼がKANKAWAさんを見て面白いことを言ってましたよ。「いやぁ、ジミー・スミスが日本語喋ってるみたい」って(笑)。

KANKAWA122のプロデューサー/ベーシストでこの夜のセッションも参加された清水興さんがインタビューに友情出演
80年代に NANIWA EXPRESS、90年代に HUMAN SOULそしてBAND of PLEASUREを底 辺から支えてきた、日本屈指のグルーヴ・ベーシスト。KANKAWA122のプロデューサー/ベーシストとして活躍。現在は CRUISING featuring TOKIやKANKAWA122のプロデューサー/ベーシス トとして活躍すると共に、石田長生トレスアミーゴスや、山口 武ULTRA TRIOに参加している。02年夏からはNANIWA EXPの再始動も開始しその活動範囲はますます多岐にわたっている。
http://www.j-welnet.com/drko/whoS.htm
 

-- ジミー・スミスさんから演奏について教えられたことで、心に残っていることなどありますか。

:今やってるKANKAWA122とかnudeJAZZはアートやねん。でもジャズ・オルガンは19歳から弾いてるけど、アートとは違う。僕は公務員の息子やけど、いつかこの世界で食ってやるって気合で『11PM』を始めた。だから食べるためのオルガンや。この差は大きいで! ジャズ・オルガンは戦争や。ジミーさんから「ジャズ・オルガンは人と和気あいあい演奏するものじゃない、アンサンブルはいらん。自分の演奏でみんな殺したれ」って教えられた。「ええか、右手からトランペットが来たら右手で弾き殺せ、左からサックスが来たら左手で弾き殺せ!」って。だから姿勢は真っすぐでないといけないと……、どんな先生やねん(笑)。悪いこと教えられたからなぁ、そのクセが抜けないのよ。だからジャズ・オルガンは気合を入れて、ネクタイしめて正装をしないと弾かれへんしな。

 

-- それは勝負するという意識があるためですか?

:そう。こんな顔で楽しく弾かれへん。だって戦争やからな。たくさん観に来てる評論家に、アンサンブルでトランペットやサックスが褒められても僕には関係ないからな。良いか悪いかは別として僕のレコードが売れればいい、やったもん勝ち、それがハーレムや。もちろん本当は、そんなのが良いこととは思ってない。そんなことよりVK-8を弾いてアートしている時のほうが、音楽を愛してからの演奏のほうが楽しいに決まってるわ。そういう演奏する時はみんなの音が好きになるからなぁ。でも、それにしても今日は楽しいな。出演者のみなさんも飲んで、食べて、楽しんでおられるかな?

スタッフ:みなさん笑顔で、顔もだいぶ赤くなってこられましたよ。

:おっ、そうか。でも、そうなるとみんなソロが長くなるな、困ったな(笑)。今日の終演時間は10時半って聞いているけど、甘いなあ。まあ、日付変わるまでに終わればエエわな。

 

-- 開演時間も迫ってきましたのでこの辺にしましょう。今日はこの後、客席で聴かせていただきます。ありがとうございました。

:はいはい、ありがとう。今日は楽しんでいってな。

 

ジミー・スミス・メモリアルコンサートは、KANKAWAさんの、厳かで、そして情熱的な即興演奏で始まりました。最初はやや緊張気味のようだったKANKAWAさんの司会進行も、出演者のみなさんが1曲ずつジミー・スミスさんの曲を演奏し、プログラムが進行するにつれ、しだいにリラックスされて饒舌になっていきました。ひとりひとりの演奏を聴き、とても楽しそうにしているKANKAWAさんの姿が本当に印象的でした。あっという間に時間は過ぎて、最後は出演者全員がステージに登場してのセッションで幕を閉じました。なお、このコンサートの模様はSKY PerfecTV!の放送チャンネル、ミュージック・エア・ネットワークにて、7月27日(水)に放送される予定です。ホットでクールなオルガン・サウンドとともにあの感動がよみがえります。是非ともチェックしたいプログラムです。

 
 
 
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