ニュースリリース

2007年5月25日
財団法人ローランド芸術文化振興財団

エレクトロニクス・アーツ・浜松賞の詳細について

電子技術を応用した芸術文化の振興と普及に努めている財団法人ローランド芸術文化振興財団(理事長:梯 郁太郎 http://www.roland.co.jp/found//事務局:静岡県浜松市)は、当財団の初めての顕彰事業として「エレクトロニクス・アーツ浜松賞」を設けました。

この「エレクトロニクス・アーツ浜松賞」は、『電子楽器演奏および、音楽制作における先駆的貢献と、電子音楽分野の確立に貢献』された方を表彰していくための「顕彰制度」として設けられたもので、このたびの栄えある第1回受賞者は次の方となりました。

受賞対象者
作曲家・編曲家/冨田 勲氏(プロフィールは別紙参照)

受賞理由
「冨田勲氏は、1974年にシンセサイザーによる本格的な第1作である『月の光−ドビュッシーによるメルヘンの世界』を発表され、その作品はアメリカ・ビルボード誌のクラシックチャート第一位を獲得するなど、全世界で空前のヒットとなったことは周知の通りである。

オーケストラのすべての音色作りはもちろん、全パートの演奏と録音を冨田氏ご自身がお一人でこなされ、この音楽制作方法は現在主流となるパーソナルスタジオでの音楽製作の先がけとなっている。その後も、次々とアルバムを発表され、クラシック・ファンや電子音楽ファンのみならず、幅広い層から圧倒的な支持を得ている。

当財団では、同氏の電子楽器演奏、電子楽器を駆使した音楽制作を通じた電子音楽分野確立への多大な貢献と業績を称え、このたびの『エレクトロニクス・アーツ浜松賞』贈呈に至った。」

冨田勲氏の受賞コメント
「このたびの『エレクトロニクス・アーツ浜松賞』に、私が初の受賞者ということで、たいへんうれしく名誉に思います。それと同時に、私自身ここで過去をふり返りまして感慨深いものがあります。

私は作曲をするかたわら、40年近くにわたって、独自に電子機器による新しい響きを出す楽器音の開発にこだわってまいりました。それは私の音楽表現にとって極めて重要な事柄との思い込みがありました。

しかし、それには過去の参考にするものがなく、ひたすら地図のない山を登るようなもので、進む先に明確な目標も見えてこず、ただ足元を見ながら自分の信念と、その先の未来に広がるであろう大きなロマンのみを頼りに夢中になって今日までに至りました。その間ローランド設立当時の梯社長、そして社員の方々からは多大な技術的なご協力をいただきました。

山の霧が晴れてふり返り、はるか下に自分の登ってきた足どりが見えてきた瞬間、私のはなはだ勝手な解釈ではありますが、その方向は間違っていなかったと確認ができた時、後悔のない時を、志を同じくするみなさんとともに過ごさせていただいて来たことに大きな幸せを感じます。その証が今回の賞であると思い、心から皆様にお礼を申し上げます。

まだまだこの先にも険しい難所がありますが、ロマンがある限り今後も続けてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。」

◇   ◇   ◇

受賞された冨田 勲氏には、当財団より、顕彰金として300万円が贈られます。 当財団では、この顕彰事業発足を機に、毎年、当賞の受賞対象者を選考していく方向です。

受賞者略歴

 

冨田 勲(とみた いさお)氏   冨田 勲(とみた いさお)氏
1932年(昭和7年)東京生まれ。慶応義塾大学在学中に作曲家・平尾貴四男、小船幸次郎に師事。1950年代前半から放送、舞台、映画、コマーシャルなど多彩な分野で作曲家・編曲家として活動し、優れた作品を数多く残している。1974年にシンセサイザーによる本格的な第1作である「月の光−ドビュッシーによるメルヘンの世界」を発表し、アメリカ・ビルボード誌のクラシックチャート第一位を獲得するなど、全世界で空前のヒットとなる。オーケストラのすべての音色作りはもちろん、全パートの演奏と録音を冨田氏ご自身が一人でこなされたものであり、この音楽制作方法は現在主流となるパーソナルスタジオでの音楽製作の先がけとなっている。その後も、次々とアルバムを発表され、クラシック・ファンや電子音楽ファンのみならず、幅広い層から圧倒的な支持を得ている。『トミタ・サウンドクラウド』の世界各地での開催、「幻想交響組曲絵巻“源氏物語”」などの作曲や、奥三河の鳳来寺山の鏡岩の反射音を利用した 5.1ch サラウンドによる「仏法僧に捧げるシンフォニー」を発表するなど、音と音響空間にこだわった、旺盛な活動意欲はとどまることを知らない。
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