その有意義さは回を追えば追うほど大きなモノになっていく予感大である。なんてことを前回の【Roland presents DESIGN NOTES SCALE.2】のライブレポートでは書かせてもらったのだが、それを実現していけるイベントなんて実はほんの一握り。大体どっかで上手く行かなくなる。しかしこのイベントは3回目もしっかりと前回以上の進化を感じさせてくれるモノとなった。その内容は以下の通りだ。
今夜のトップバッターは、個人的にも、そしてこのイベント的にも実に思い入れの強い二人組が飾った。arp(アープ)。魂の女性ボーカリスト・大宮あん朱、魂のトラックメイカー・濱田貴司(ピアノの音色でFantom-X8を使用)から成る、人の心に響く音楽を追求している唯一無比のユニットである。で、この日のライブ、「私、あなた、君、自分自身、私のこと、君のこと・・・」と、あん朱の語りが濱田が生み出した幻想的かつ生命力溢れるトラックに乗り会場中に響きわたり、気が付くと、ステージにその二人がサポートメンバー(今夜のサポートはチェロ)と共に存在しているという、最近お約束となっている登場シーンをクールに決める。そしてあん朱の口から、いや魂から飛び出す言葉、歌は「ひとりで泣いていませんか?」。ストイックに意味深い音楽・表現の在り方を追求する二人だからこそ生み出せる、一瞬にして聴き手の心臓を鷲づかみにする音楽とメッセージ。どうしようもなく心の奥底から湧き上がる、引き出される、妙に温かくて優しくて愛おしい想い。何度歌われても、聴いても、削れることも薄れることもない、純粋たる想い、願い、求め。今夜のarpも変わりなく。
「奏でる喜びをすべての人へ」というイベントコンセプトの元、続いてステージ・ピアノRD-700SXの前に姿を現したアーティストは、笹川美和。先の大宮あん朱とはまた違った、幻想的で吸引力ある歌声を弾き語りスタイルで彼女が響かせると、これまた一瞬にして世界は色を変え、僕らの心臓は鷲づかみにされる。またそこにアコースティックギターとパーカッション(生パーカッションとハンドソニックHPD-10を使用)の音色が加われば、その世界はより住み心地のいいモノとなり、自然と僕らの体はゆっくりと揺れ始める。「今日はローランドさんのイベントに呼んでいただきまして、とても光栄に思っています」と、これまでずっと愛用し続けて来たローランドのイベントに出演できた喜びを口にすると、その多幸感あふれる感じを続く『雪雲』でも表現。まるでリバーブが掛かっているかのような広がりのある生声で悠々と歌い上げていく。サウンドはやわらかいのに実に力強く感じさせる声と音、それを前にして僕らは。そっと目を閉じてカタルシスに浸る。こんな音色を体感できたことに感謝したくなるほどに。笑い、笑え、泣き笑え。そのフレーズは見事なまでに今の僕らの心理描写となった。
2006年のbayfmの年間リクエストチャート第1位に輝いた『桜小町』。この楽曲で彼の存在を知った人も少なくないと思うのだが、知らない人のために“ナオト・インティライミ”を説明すると、ニューヨークのアポロシアターで大暴れし、アフリカに一人旅で行ってケニアでの飛び入りライブで現地人から絶賛され、アマゾン川岸のビーチで歌って1万人のブラジル人の心を掴み、それ以降も数え切れない程の国をまわっては音楽を奏でてきた“ザ・ボーダーレス”なミュージシャンである(今日は本イベントの司会進行も任されつつのライブ)。そんな前振りをすると、ギター一本でカントリーチックなパフォーマンスをしている人かと思われるかもしれないが、いきなりボコーダー(VP-550)でデジタリックな歌声を披露。で、その声と野性味溢れる生声を使い分けながら超・大陸的な音楽世界を創造していくナオト。躊躇なく世界を歩き回る男の生み出す音楽ってやつは、笑っちゃうぐらい開放的で、それでいてめちゃくちゃ熱い血を感じとることができる。続いて彼は、RC-50を使用したルーパーの面白さをアピール。自分で口にしたことに対して多重録音したタカアンドトシ風のツッコミが一斉に迫ってくる。なんていう、音楽とは関係ない使い方(笑)もしていたが、続いてのヴォイス・パーカッションやハーモニーのリアルタイム超多重録音は非常に音楽的で新しいパフォーマンスであった。ここまで音楽(楽器)の可能性を見出されれば、ローランドも大喜びだろう(笑)。
聖飢魔IIのエース清水長官とGRASS VALLEYの本田海月のユニット。これだけ聞くと、もうどれだけハチャメチャな音楽やってんだ!?と、想像させるのが・・・すげぇ美しい音楽やってるんですよ。まずエースさん、ギター・シンセだし、ノーメイクだし(笑)。すげぇイイ歌声してるし。本田さんのA-33(音源としてFantom-XRを使用)から聴こえてくる音色もめちゃくちゃ爽やかだし。もう純粋に、ストレートに、キャッチーに、良い大人の音楽を響かせてくれる。「こう見えても私、元悪魔でして(笑)」と、エース。「中学生時代からのローランド・ユーザー」と、本田。MCも結構軽やかで面白い。あらゆる面での安定感はさすが。それにしてもこの二人が揃って奏でられる音楽が実に“AOR”的なのは面白い。熟練の中で余計なモノが削られると、純粋に心地良い音楽がそこに生まれるということか。ある意味、今夜一番のサプライズ。「80年代のAORやニューミュージックが大好きだった」という音楽ファンであれば、99%この音楽は響くだろう。シンセサイザーの音も皆がイメージするパワフルなシンセの音そのものだし、すごく気持ちの良い音楽だった。
毎回、音楽の根本的な楽しさを教えてくれる【Roland presents DESIGN NOTES】、そのコンセプトはやはり回を追うごとに意味深いモノとなっている。築き上げたい何かがそこに形になっていっている印象を受ける。次回の開催が楽しみになる、そんなイベントになっていっているのではないだろうか。

|