イタリアでのVアコーディオン開発中にあった、こぼれ話。
苦労と笑いの中から生まれた、デジタル技術の裏側を少しだけご覧いただけます。


Vアコーディオンは、先端のデジタル技術の結集で音を奏でているわけですが、開発するにあたっては、デジタル楽器メーカーのローランドとしては新たなチャレンジの連続でした。扱い慣れない部品や技術が数多く必要だったからです。蛇ばら(ベローズ)、ベローズの動きを感知する空気圧センサー、充電池、超軽量スピーカー、特殊なボタン鍵盤等など・・・これらの経験したことの無い技術を融合する事は、やりがいのある仕事であったとともに、困難を極めるケースも多くありました。

「よし、この調子なら予定通りに発売できる。」そうだれもが信じていた頃、突然、異常が発生しました。プロトタイプのアコーディオンが、誰も触わっていないのに勝手に鳴りはじめたのです。これには皆びっくり。プログラムをチェックしても異常はありません。しかも、翌日には正常な状態に戻ったかと思うと、夜にはまた勝手に鳴り始めたりします。原因がわからないまま数日が過ぎました。「なぜだ?ソフトウェアに問題は見当たらない。デジタルでコントロールされている楽器が、日によって様子を変えるなんて有り得ない・・・」頭を抱えるルイジ。
「このV-Accordionは人間の心を持ってしまったのかもしれない。いずれ楽器は人間に復讐を始めるぞ。」と映画好きの開発スタッフが冗談を言い出す始末・・・

「アナウンサー : 強い低気圧がアドリア海沿岸に近づいています、この為、明日は強い雨と冷たい風が・・・」
「これだ!外気圧だったんだ!」レストランでスタッフが狂気乱舞したのは言うまでもありません。ベローズ内の空気圧を検出する為の高感度空気圧センサーは、その精度の高さゆえ、外気圧の変化までも正確に感知してしまっていたのです。その為、高気圧が広がる晴れた日と、低気圧が接近している日では、全く違った楽器のように反応してしまうのでした。
その後Vアコーディオンは、ボディの内部と外部の2箇所で空気圧を同時に計測するよう改良され、外気圧の影響は解消されました。今ではVアコーディオンは雨の日も晴れの日も、ビーチでも山でも美しいメロディーを奏でる事ができます。
デジタル楽器開発のヒントが天気予報。こんな不思議な取り合わせも世界初のVアコーディオンならではです。陽気なイタリア人スタッフ達は言っています。「次世代のVアコーディオンには、このセンサーを利用して天気予報機能も搭載しようか?」